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Years & Years "Communion" アルバム・レビュー

Years__Years_-_Communion_(cover).jpg

01. Foundation
02. Real
03. Shine
04. Take Shelter
05. Worship
06. Eyes Shut
07. Ties
08. King
09. Desire
10. Gold
11. Without
12. Border
13. Memo



昨年大ブレイクし、今年発表されたグラミー賞でも主要部門3部門をさらったSam Smithが大きく知名度を上げるきっかけとなった”BBC Sounds”の2015年版で1位に輝いたのが、このYears & Yearsというロンドンで結成されたエレクトロポップ・グループです。俳優としてのキャリアも順調に歩んできたフロントマンのOlly Alexanderのカリスマ性も含めて、彼らの2015年の大きな成功はすでに約束されていたようなもので今期待の新人の1組でもあります。

彼らの音楽的な特徴としてハウスとR&Bを絶妙にブレンドしたポップスでありながら、バンド編成のインディースタイルからロックリスナーも取り込むことのできる、その多様性が今までのグループにありそうでなかった彼ら独特の強みとなっています。そういうこともあり、元々インディ・ロックリスナーからの注目度も高く、昨年に発表された”Real””Take Shelter”といった独特の世界観の楽曲で彼らの名前を耳にする機会がありました。そして、今年1発目にリリースされたシングル”Desire”こそロック的アプローチのナンバーではあったものの、メインストリームにも大きなインパクトを残すことのできるキャッチーな楽曲だったこともあり、初めてUKチャートにランクイン。続いてリリースされた”King””Shine”はどちらもR&Bとハウスのいいところを凝縮した、癖になるシンセの繰り返しとキャッチーなコーラスが印象的な楽曲で、どちらも全英1位、2位の大ヒットを記録することになり、大きな飛躍を遂げることとなりました。そんな大きな注目が集まる中リリースされたこのデビュー・アルバムは当然のごとくUKで1位を獲得している他、ヨーロッパを中心にヒットを記録しています。





Olly Alexanderの歌う『愛とセックス』

今の音楽シーンでセックスや愛について何が語られるべきか、どんな時代であれどんなジャンルであれ誰もが模索している永遠のテーマであります。Olly Alexanderはこのアルバムを制作するにあたって「ほとんどの曲は、僕のいままでの恋人について歌っているものばかり」だと発言していますが、初期のMIKAのようにハッピーな感情を脳天気に歌うこともしなければ、Adam Lambertのように大胆かつ大げさなボーカルを披露することもしないし、Sam SmithやFrank Oceanのように叶わぬ恋を切々と歌い上げることもしないのです。少年のような脳天気でキュートな笑顔が印象的ですが、25歳の彼は人生経験も多いがゆえに、複雑で矛盾した感情を繊細な歌声で表現することができます。そのギャップこそがYears & Yearsというバンドの大きな核となっています。そこには人生で経験するあらゆる出来事における、その時の感情を切り取っているのですが、そこに明確な答えは出てこない。Ollyは”Desire”で、”Is it desire, or is it love that I’m feeling for you?”と尋ねますが、答えを出そうとはしない。それが人生というものだからです。



このデビュー作は明るく楽しい気分の高揚するシンセ・ポップが主体でありながら、その中に自己嫌悪、悲しみが同居しています。一見楽観的に見えても、自らの身体を支配しているのは限りある現実世界での孤独で繊細な感情であり、これは自身もゲイであることを公言している彼のフィルターを通して表現されたゲイの感情・欲望を丁寧に切り取っているものなのです。1曲目の”Foundation”ではThe Weekndを思い出させるR&B色の強いダークなビートの上で、「関係を終わらせることはよいことだ」と自分に言い聞かせながらブリッジでエモーショナルに”I wanna love it so much. I wanna be the one. I wanna do what you love. Cos I was lying, I don’t really wanna be fine. It’s all over.”と叫びますが、それこそ彼が伝えたいこのアルバム全編におけるメッセージになっています。



そして、彼の恋が始まります。”Real”では”I’ll do what you like if you stay the night.”と訴えかけ、”Shine””It’s you that I’ve been waiting to find.”と、恋に落ちた時の感情を一筋の輝きに例えながら告白します。しかし、その確信は長く続かず、関係を終わらせるべきか、それとも悪いとこも含め恋人のすべてを愛するべきなのか悩み続け、”King””I was a king under your control / I wanna feel like you’ve let me go”と感情を解き放ちます。続く”Desire”でも先程述べたように答えの出ない感情をひたすら煩悩しており、この感情の爆発がこのアルバムにおけるハイライトとなっています。その後その関係は終りを迎えてフェードアウトしていきます。コレは一人の人間の人生の終わりであり、始まりでもあるのです。





Years & Yearsが目指している音楽

彼らの音楽的な親しみやすさを軽蔑する向きもあるかもしれませんが、サウンド的にもただ踊れるシンセ・ポップとしてだけではなく、このようなアルバム通しての感情の揺れをうまく表現しています。さらに、DisclosureやClean Bandit、Sam Smithまで最近の潮流を取り込みながらも80年代・90年代のダンス・ポップを彷彿させるサウンドでもあり、彼らの音楽を面白くないと一瞥することはできないと思います。それに、彼らはこのアルバムを通して何か大きなテーマを扱おうとはしていません、人生の試練、悲しみに直面した際に、いかにして乗り越えていくかだけにフォーカスが当てられているのです。





ゲイのミュージシャンとしてのリアルを表現すること

なぜ彼らがこのようなアルバムをつくろうとしたか。それはやはりOlly Alexanderの性的嗜好を無視して語ることはできないと思います。Adam Lambertがゲイをカミングアウトしてブレイクしてからというもの「ゲイを公言してしまったシンガーは女性ファン層を失い、セールスが落ち込む」というジンクスは完全に都市伝説になりつつあります。ホモフォビア的風潮が根強かったR&B/HIP-HOP業界はFrank Oceanの登場以降、その風潮さえ変わりつつあるし、Sam Smithのような幅広い層から愛され、さらにグラミー賞でも大活躍するようなシンガーも現れ始め、性的指向に関係なく音楽性を評価する傾向が強まっています。しかし、こうしたシンガーたちでさえも「ゲイのアイコンになりたい」といった発言をすることは少なく、Sam Smithはデビュー期はこういった発言をして「ゲイであること」が過剰に打ち出されるを避け、ブレイクしてから「ゲイ」に関する社会的問題を提示する姿勢にシフトしています。ゲイ・アイコンになることを辞さない姿勢だったAdam Lambertでさえ、楽曲に露骨に同性愛的表現することを避けたのは、女性ファンを失いたくないという気持ちがあったのは明らかだと思います。

しかし、Olly Alexanderはアルバムリリースのかなり前に堂々とゲイであることを公言し、さらにセクシュアル・マイノリティ系のメディアにも積極的に露出しインタビューを受けています。その中で彼は「僕はゲイのアイコンになりたい」と宣言しています。さらに「Sam Smithのファンは本当に女性がほとんどだった。その時に決して多くはないゲイのミュージシャンであることの意味ってなんだろうって考えたんだ」、「ゲイのシンガーが男性について歌うのが許されない現状が悲しいんだ。メインストリームでもっとゲイの男性がオープンに恋愛について表現するのが聴きたいんだ。」と語っています。こうした発言からもあえて、デビュー・アルバムではゲイのポップシンガーとして人生において直面する感情に関するリアルな表現をしているのだと思います。しかもそれでいて、性的指向関係なく誰もが共感できるような感情の動きだからこそ、幅広いリスナーにアピールすることができるのです。



Ollyのボーカルはミルクティーのように甘く滑らかで温かい、その繊細さが大きな持ち味になっていますが、特に本編ラストの”Memo”では、スロー・テンポのピアノの音色の上で、ストレートの男性の友人への恋心をいまにも壊れそうなファルセットで丁寧に歌っています。しかし、その愛に関して明確な答えは出てこない。だからこそこの矛盾した気持ちを曲にして観客に訴えかけるし、疑問を投げかけてくるのです。もちろん私達リスナーは共感し泣くこともできるし、何も考えずに踊ることもできる。Olly Alexanderはゲイについてもっと理解を深めるべきだとも言わないし、自分たちの曲を聴いて泣くことを強制したり、ダンスを強要したりもしません。それぞれの人生があり、複雑な感情が芽生える中で、「自分に正直になって自分にとって最良の選択をし生きることの重要性」を伝えようとしているのではないでしょうか。



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